複素の指数関数
1. 実数と伸縮
実数の指数関数は の関係を満たしているのが特徴だ。
言葉でいうと「足してから入力しても、入力してから掛けても同じ」というような感じだ。
また、図形的には、実数の指数関数は数直線を「伸縮させる」。
たとえば、 を入力したら数直線を伸ばし、 を入力したら何もせず、 を入力したら縮める。
つまりポイントは以下になる。
- 足して入力 入力して掛ける
- 数直線を伸縮させる
2. 複素数と伸縮
入力を実数から複素数へ拡張してみよう。
ここでも の関係を満たすようにする。
複素数は と表せるので、 となる。
でも複素数とはいえ、 や は実数だ。
そのため「入力して掛ける」の のところは、実数の指数関数になっている。
ということは、やはり数直線を「伸縮させる」。
ただし実数のときと違って、複素数のときは複素平面が相手だ。
そこで、複素平面を「伸縮させる」ことにする。
では「入力して掛ける」の のところはどうだろう。
これは複素数へ拡張したために、出てきたものだ。
3. 複素数と平行移動
ところで指数関数は複素平面を「伸縮させる」と書いたけれど、入力する複素数は何をするのだろう。
入力する複素数が実数のときは複素平面を実軸方向に「平行移動させ」、純虚数のときは虚軸方向に「平行移動させる」。
そして一般の複素数のときは任意の方向に「平行移動させる」。
一方、同じ複素数による「平行移動」でも、「伸縮」と「回転」に分解することもできる。
たとえば は、実軸へ 、虚軸へ の「平行移動」と考えられるし、 の「伸縮」と の「回転」と考えることもできる。
つまり同じ複素数は「平行移動」とも「伸縮&回転」とも考えられるのだ。
4. 複素数と回転
以上のことをふまえて、再度 を見てみる。
さっき述べたように は複素平面を「伸縮させる」のだった。
では は複素平面をどうするのだろう。
そう、複素平面を「回転させる」のだ。
このとき「伸縮」はもうしない。
つまり、点 を単位円上に動かす純粋な回転だ。
まとめると以下になる。
- 足して入力 入力して掛ける
- は複素平面を「伸縮」させ、 は「回転」させる。
を言葉でいうと「平行移動してから入力しても、伸縮させて回転させても同じ」となる。
5. まとめ
・・・と、ここまでたどり着いたものはいいものの、これはどういうことなのだろう。
それは を考えてみると分かる。
指数関数なので となり、 は計算できて「伸縮」を表す。
でも はどうがんばっても意味が分からない。
ここでさっき考えたことが役に立つ。
は「回転」を表すのだった。
あと残る疑問は は一体、複素平面を「どれだけ」回転させるのかということになる。